フランクフルト


「詩と真実」

4部から成る、ゲーテの自叙伝。第1部は1811年、第2部は1812年、第3部は1814年に公にされ、第4部は少し間をあけ1831年に完成した。彼はこの後「ファウスト」を完結しその2年後の1833年に没した。
「真実」とは何か、「詩」とは何か。ゲーテ自身の言葉を引用しよう
<この本はただの私の生活の結果である。そうしてここに語られた一つ一つの事実は、ただ普遍的な観察、より高い真実を証明するために役立つにすぎない。---このうちに人生の2、3の象徴を寓していると思う。私はこの書を「詩と真実」と名付けた。なぜなら、より高い傾向によって、低い真実の世界から高められているからである。---我々の生活のある事実は、それが真実であるから価値があるのでなく、ある意義を持ったために価値があるのである>

フランクフルトにおける皇帝の戴冠式の様子は第1部の第5章に生き生きと描写されている。
<皇帝と王たちがバルコニーから小室へ退かれ、そこから再び出て、レーマー大広間の宴におもむかれる、ということは誰もが知っていた。--私はそこで、広間の扉の真正面に向かう大階段を登っていった。すると幾人かの気品ある人々に出会う。今日この日、帝国の主に仕えようとする身分の高い人々である。台所から食事を運ぶ44人の伯爵たちが私の横を通り過ぎてゆく。皆、実に壮麗ないでたちである。--広間の扉はしっかり守られ、権限ある人々だけが出入りしている。私はファルツ候の召使いの姿を見つけると、この者に中に入れてはくれまいかと尋ねた。この者は長くは考えず自分の持っていた銀の壷の一つを渡してくれた。--こうして私は神聖なる場に達することができたのである。大広間の奥、窓のすぐ近く、天蓋の下の玉座には皇帝と王侯たちが礼服をまとって座っていた。少し離れたところ、綿の座布団の上には王冠と王笏とがおかれていた>