ヴェネツィアTC ガイド
ヴェネツィアを舞台にした作品


ヴェニスの商人  ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)

セル・ジョバンニ・フィオレンチーノが書いた「ヴェネチアの商人」という短編小説をもとにイギリスの劇作家シェイクスピアが書いた劇。シェイクスピアの「オセロー」の第一章もヴェネツィアが舞台だが、デズモーナと呼ばれるオセローの妻が「供の者といってもゴンドリエ(ゴンドラの船頭)ひとりを連れただけで、父の家を抜け出してムーア人(オセロー)の黒い胸に飛び込んでいった」という台詞があるだけで、運河もゴンドラも全く出てこない。シェイクスピアはヴェネツィアを訪れたことがなかった。

第一幕
ヴェニスの商人と呼ばれるのはアントーニオと呼ばれる立派な商人で、その友人にバッサーニオという遊び好きの若者がいる。彼はそろそろ身を固めたいとベルモントに住む美しい女相続人ポーシャに求婚しにいく為の旅費を友人であるアントーニオに貸してくれと頼む。アントーニオは所持金をいくつかの船に投資していて手持ちがなかったが、友人のためにユダヤ人の金貸しシャイロックに3.000ダカットのお金を3カ月の期限で借りることにする。立派なクリスチャンとして「お金が子供を生んではいけない」という聖書の教えを守り、利息も取らずにお金を貸していたアントーニオに対し、利息で生計を立てていたシャイロックは「自分の商売の邪魔をする男」とアントーニオを快く思っていなかった。これはいい機会だと「お金を貸すがあなたの主義に合わせて利息はいらない。ただし期限までに元金を返さなければ、好きなところの肉を1ポンド取る」という契約を交わす。
第2・3幕
アントーニオから借りたお金を持ってバッサーニオがポーシャのもとに求婚旅行に出かける。ポーシャの所には父の遺言で金と銀と鉛の箱があり、そのどれかに入っているポーシャのポートレートをあてた男性がポーシャと結婚できる事になっていた。いろいろな男性が次々に来ては失敗していく中で、バッサーニオが現れる。この箱選びのシーンと金貸しシャイロックの娘ジェシカが恋人のロレンゾーと駆け落ちするシーンが交互に出てくる。
第4幕
バッサーニオはポーシャのヒントをもとに鉛の箱を選び見事ポーシャの花婿に選ばれる。そこにヴェニスからアントーニオの船が戻らず、期限までにお金が返せなかったために裁判になるという知らせが来る。バッサーニオはポーシャから大金をもらって駆け戻り、ポーシャは侍女を連れ、男装して法廷に乗り込む。ここで有名な大岡裁きのシーンとなる。「証文どおりを要求して慈悲をかける気がないのなら、肉1ポンドを取ってもよいが、血については証文に記されていないから、一滴も流してはならない」この裁判でシャイロックは殺人未遂の容疑をかけられ財産を没収される。
第5幕
舞台はポーシャの館。みんなが集まりハッピーエンドとなる。


海の都の物語  <ヴェネツィア共和国の一千年>
続海の都の物語   塩野七生
(しおのななみ)

「アッティラが攻めてくる!」「フン族が押し寄せてくる!」そんな書き出しで物語は始まる。
副題にあるように、452年アッティラを避けてラグーナの中に移り住んだ人々が、ヴェネツィア共和国を作り上げ、その国が1797年ナポレオン軍によって滅亡するまでの歴史を描いた本である。2巻に別れる読みでのある本だが、長年イタリアに住み数々のイタリアに関する著書を残す塩野七生さんの代表作である。昔から水の都と詠われてきたヴェネツィアを海の都と呼び、彼女らしい辛口のさっぱりした文で書かれている。歴史的裏付けは確かだが、多くの歴史書に見られるような堅苦しさがなく、読者に語りかけるような文体が大変読みやすい。
歴史・生活・建築・政治とヴェネツィアに関するあらゆる事が年代を追って記されており、これを読み終えればヴェネツィアがよく理解できるかも。

時間が無くて読めないという人には、同じく塩野七生さんの「サンマルコ殺人事件」なんていう軽い読み物もある。小説ではあるが中世の頃のヴェネツィアの様子が描かれていておもしろい。




ヴェニスに死す トーマス・マン(1875-1955)

ドイツの作家トーマス・マンは第一次世界大戦中や戦後の体験からヒューマニズムに目覚め、以後一貫してその擁護のために戦った。ナチス政権が成立するとアメリカに亡命し、第二次世界大戦後はここも去り、スイスで亡くなっている。代表作に19世紀後半の豪商ブッデンブローク一家の没落の歴史を描いた「ブッデンブロー家の人々」、新しいヒューマニズムの立場を確立した「魔の山」などがある。
「ヴェニスに死す」はグスタフ・フォン・アッシェンバッハという覚めきった作家が、平安と休息を求めてヴェネツィアに居を定め、非常に美しいポーランドの少年と出会うことによって、汎神論的、神秘主義的な心の高揚を覚えるという作品で、ヴィスコンティによって映画化された。

映画「ヴェニスに死す」 Morte a Venezia (1971年作品・イタリア/フランス)

心身ともに衰えを感じてきた初老の音楽家、グスタフ・フォン・アッシェンバッハは療養先のヴェニスで会った少年タッジオに「理想美」を見いだす。ほのかに頬を染めるセーラー服姿の少年は宿泊先のホテル デ・バンで鋭く挑発的な視線を投げかけ音楽家を虜にする。老いを隠そうと髪を染め、化粧までして少年を追う男の心情が痛いほど胸に響く。やがてコレラがヴェニスを襲う。アッシェンバッハはタッジオがいるヴェニスから離れられない。ラストシーンはリド島の海岸である。海につかりながら、ギリシャ彫刻のポーズを取る水着姿のタッジオ。それを遠く砂浜からビーチチェアーに座りアッシェンバッハが眺めている。髪を染めた染色が汗と一緒に彼の額に流れてくる。音楽家は静かに息を引き取る。

マーラーの交響曲第3番、第5番が映像と供に時に寂しく、時に激しく響きわたる。原作では小説家が主人公となっているが、ヴィスコンティはそれを音楽家、グスタフ・マーラーをイメージし、その音楽世界を借りて幻想的な映像美の中に耽美と退廃の極致を描き出した。

ルキノ・ヴィスコンティ LUCHINO VISCONTI
1906年、ミラノの名門貴族ヴィスコンティ家に生まれる。デカダンス色濃い作風。76年死去。
「郵便配達は二度ベルを鳴らす」42年/「揺れる大地・海の挿話」48年/「ベリッシマ」51年/「夏の嵐」54年/「白夜」57年/「若者のすべて」60年/「ボッカチオ70」62年/「山猫」63年/「熊座の淡き星影」65年/華やかな魔女たち」67年/「異邦人」68年/「地獄に堕ちた勇者ども」69年/「ヴェニスに死す」71年/「ルードヴィヒ神々の黄昏」72年/「家族の肖像」74年/「イノセント」75年

主役の音楽家を演じたのはダーク・ボガードで、彼はこの映画の後もいくつかの映画に出演したが今は小説家となり活躍している。
美少年タッジオ役はヴィスコンティ自身がヨーロッパを探し、スウェーデンのビョルン・アンドレセン当時15才が選ばれている。


映画「旅情」 Summertime (1955年作品・イギリス)

もう若くはないアメリカ人のOLケートが休暇でヴェネツィアを訪れる。8ミリカメラ片手にうわべでははしゃいでいても、心の中には孤独というすきま風が吹き抜けるばかりだった。ケートはヴェネツィアングラスを買うために入った店の主人と知り合い、つかの間の恋に落ちる。

水の都ヴェネツィアの魅力を捕らえた観光映画の名作である。ケートが運河に落ちるシーン、サンマルコ広場のカフェでの店の主人ロッシとのデート、そしてテーマミュージック「旅情」が大変印象的である。今でもサンマルコ広場のカフェで一番多く演奏されているのがこの旅情のテーマである。映画の中に出てくる真紅のゴブレットは監督の特注で作られた品だそうだ。

監督・脚本 ディヴィット・リーン
原作    アーサー・ロレンツ
主演のキャサリーン・ヘップバーンは当時48才。わびしい女心を見事に演じている。
相手役はロッサノ・ブラッツィ。ロマンス・グレーの中年男性の魅力がよくでている。


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